哀しみも希望も全て貴方に依存する


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○.
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  、
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「みーちゃった」
「何を?」
「さっきの」
「ああーあれ?あれがどうかしたの」
「もしかしなくとも、あれは告白だったでしょう」
「違うよ」

シャルの鼻がひくっと動いたことを私は見逃さなかった。したり顔の後ろに哀しみを咄嗟に隠してぴょんと乗っていたゴミの上を跳ねて、シャルの居る地面に着地する。シャルは「別に何もないよ」と怒ったような顔で言った、もう何もかもが証拠になっている。彼は嘘をつく時目を合わして嘘をついてくれるが、見分けるべきポイントは最初に嘘を吐くその瞬間だ。ぴくりと顔の一部が硬直する、それを見逃さなければシャルなんて攻略したも同然!(・・・だと、思う)顔に一瞬でも出すだなんてシャルもまだまだ子供だわ!しかしその子供っぽい所が私の好きな所だったのです救いようの無い事に。全ての感覚を貴方に依存しているのです。

「リンコちゃん可愛かったのに。もったいないな」
「っていうか全部聞いてたの?趣味わるいなもう」
「私だけじゃないもんねー!マチとノブナガが私よりがっつり聞き入ってたね」
「の、のぶなが・・・・(これはまた厄介な)」

シャルが喉が渇いたというので、私達は井戸のある方へと二人で一緒に歩いていった。昼前の太陽が真っ白に辺りを燃やして照らしている。熱くて暑い。私の体もシャルの体も太陽の火に焼かれて、黒くて薄い、厚さの無い灰を地面に落としていっているようだった。まるで、影がそのように見えたのだ。影がぐったり疲れきっているように見えたのだ。彼は少し、急ぎ足だった。
ゴミから適当に漁ってジュース等を探してもよかったのだが、それらは季節の関係で大変腐りやすくなっている。夏のせいだ。その為に皆この時期はあまりこの街に落ちているものを拾わない。飲み水は誰かが掘ってくれた井戸から調達すればよいが、食べ物はどうだ?時々余所から届けられる食べ物も全部大人が食べてしまう。だから私達のような子供には絶対回ってこないので必然的に食料を求めて争いになってしまう。この街のおかしいところは、そういう子供達を見ても大人たちが止めに入らないことだと私は思う。夏は私達を飢えさせる。

「シャル」
「何」
「あのさ、・・・何て答えたのって聞いちゃだめ?」
「うーん、何だっけ、」

彼は興味の無い事は全く覚えない。(薀蓄を溜める為の努力は怠らないくせにね)

「まずキミをそういう風に見たこと無いって言った」
「うわ、あら・・・(私が言われたら絶対泣くなあ)」
「そういう人、もう別に居るからって言っちゃった」
「えっ初耳・・・!それすっごい初耳!そうなの?」

それが私だったらいいのにー!!!

そう言うことは言っても無駄、無駄なのだ。(何故ならおそらく私は既に彼に女扱いされてないと思うからなのである!)
その時くうとお腹が鳴ってとっさに腹に力を入れたが、「聞こえたよ」と少し笑ったような声に羞恥心を煽られてますます腹を押さえる腕に力を入れた。私は今日は朝から何も食べていない。そもそも起きて来るのが遅かったので。

「お腹、すいた?」
「音聞いておいてそれ言うか」
「うん、まああえての確認かな」
「きーっ!!すきました!ぺこぺこだけど誰も食べ物残しておいてくれないんだよねー私の近所ケチなオッサンばっかりで」
「あのさ、住むのやっぱり俺の所にしておいたら?全っ然そういうのと無関係だし。引越せよ」
「うーんそうしようかな」
「クロロが仕切ってるしさ。クロロは一目置かれてるから、周りの大人も何にも言わないんだよね」
「クロロ私にご飯くれるかな。友達だもんね、くれるよね」
「うーん、きっとたぶんね」
「(意地悪!)まあくれなかったらシャルに襲い掛かるよ私は」
「・・・!」

歩くスピードは元のままだったが、急に戦慄だって絶句した彼を私はまあるい目で見つめた。彼は目をつぶり、かぶりを振って「、そういう事は言っちゃだめなんだ」とだけ言って私から若干離れた。まさか本気にしたの?

「いや、嘘だよ。冗談」
「(っあー冗談かー・・・)うん知ってる」

あっシャルまた嘘をついた!(本気にしたのか!)

井戸のところまで来るとシャルは待ちかねましたと言わんばかりにつるべを落とした。がらがらがら、という音がした後に水が跳ねる音が、・・・しなかった。ゴンカシャンという音がしただけであった。シャルが「そんな!」と悲哀に満ちた顔で井戸を覗き込む。私も覗いてみると、成る程井戸は枯れていた。(合掌)
その間にも太陽は私達を殺そうとじりじりと燃やし、頭の皮膚を虐めた。シャルは嗚呼と井戸のへりに手を付くと、ウチ帰ろと元来た道を戻り始めた。これから家へ帰るといった彼の後を私はついて行っていいのかすっかり迷って狼狽していると、シャルが呆れた顔で早くおいでよと声を掛けてくれた。その時私は、とても、とても救われたような気がした。枯れた井戸というイメージは、元気を吸い取るようなネガティブなイメージを私に与えていたのだから。
その後シャルはクロロやマチの居る地区へと連れて行ってくれ、ご飯をご馳走してくれた。遠慮なく有難く頂いた。その他の皆も適当なガラクタを見つけ、その上でご飯を広げて食べていた。新鮮なごはんだ、ご飯粒が黄色くない。がつがつと私がご飯にありついている間、クロロが「なんだか苦労してる風だなあお前」と他人事のように構ってきたので適当に相手をした。遠くでシャルが今日のリンコちゃんの事でノブナガと話を知ったフィンクスにえげつなく弄られてクシャクシャにされていた。その様子を見てずっとクロロと笑っていた。

「もううるさいぞお前ら!」
「まあな、もてる男は辛いってーのわかるぜ?そうくしゃくしゃすんな」
「いやノブナガはどちらかっていうと割りともてない方なのでは」
「!」
「うーんに言われるとちょっと現実味があるね。残念ノブナガ!斬り!」
「古いよシャル」
「うん」

いやそれはさておき女子直々の貴重な生の意見だしね。シャルはようやく自分のペースを取り戻したのか何時もの飄々とした顔に戻った。(リンコちゃんのこと、振って後悔したりしてるのかしら)ああなんだかシャルに一生私の気持ちに気づいて欲しくないように思えてきた。シャルとこの付かず付かれずの関係が一番疲れないで済むのかも、何故なら彼は何処かへ他人を拒絶しているような壁をこちらへそこはかとなく提示してくるような気がするから。彼の虫の居所だけでは済まされない、孤児故のそれか?それなら私も同じなんだろうけれど、改めてそう壁を何となく感じてしまうと後々ずっと気になって仕方の無くなるもの、消したくて、消してあげたいと思ってやまないものになる。何もしかして私シャルを救いたいの?青いな。でもそれがきっと本心だ。これを若さっていうのかしら?うーんうーんうーんとあぐねているとウボォーが私の食べかけのプリン(クロロが譲ってくれた、まだ腐ってない新鮮なやつ)を盗って食べた。舌噛んでしまえばいいとか思って蹴ろうとしたけど足を掴まれて失敗に終った。

「うわーん私のプリン!ひどい!なんてひどい奴なんだお前は!」
「ぼうっとしている方が悪い」

彼は余裕綽々といった感じで私の足を離し、プリンを一飲みするとごっそさんと笑った。ああ小憎たらしい。その後昼食がお開きになると皆思い思いに散った。夕食はまた此処でするらしい、暇で飯が無いなら午後7時に来いと言われたのでお言葉に甘えることにしよう。シャルはからかわれたのがまだ気に喰わないようで、最終的にノブナガとフィンクスをどついて口を止めようとしたようだったがひらりと二人に身をかわされますます機嫌を悪くしていた。彼は空き缶を蹴って(その空き缶は恐ろしいスピードで傍にあったもう映らないテレビを貫通した)、「違うって言ってるだろ!!!」と叫ぶと未だはしゃぐ二人を追いかけて何処かへ行ってしまった。私は置いていかれてしまったのだ。
もう此処らへんで大事に思われていないの確定だわ!もうどうしようも無いわ他人の中での自分の立ち位置程不確定で書き込み不可なものは無いんだもの。とぼとぼと元来た道を引き返した、シャルとさっき歩いたその道を逆方向に独りで歩いた。じりじりと太陽が私を狙い、そして私を護るものは何も無い。目的も無くさっきの井戸の所まで来ると、改めて自分のあまりの暇さに呆れてしまった。ああ、と息をつくと「」と声を掛けるものがあった。マチだった。そういえばこの子はさっき昼食が終るなりすぐにふらっと出て行った。

「どうしたの、こんな所で」
「暑いから傘になりそうなもの探してるんだけどさ、もう粗方取られてしまったみたいで無いんだよ」
「見つかるといいね。だってマチの白肌が焼けたら私泣いちゃうかも(よよよ)」
「あんたも注意しなきゃすぐソバカスだらけになっちまうよ」
「マチこういうの結構煩い方だったんだ」
「ところでさ、何をあんなに怒ってるんだいあいつは」

あいつとはシャルの事だ、とすぐにピンときた。既に私の頭の中はシャルだらけだったのだから。

「あーなんかねー、ほら、今朝マチとかも見たじゃん?リンコちゃんがシャルに告白してたの」
「ああ、あれ?」
「そうそう。ノブナガとフィンクスに弄られて怒ってるの」
「そりゃあ、余計な誤解与えたくないからじゃない?」
「誰に?」
「・・・・まあ自分でよく考えな」
「ちょい待ちマチ。あっ、これ面白い」
「帰っていい?」
「えっ!いや、ダメ!教えてよ答え」
「だから、自分でよく考えな」
「えーちょっと教えてよ気になるじゃん」
「何でそんなにあんた気にするんだよ、何とも思ってないんじゃないの?」
「えっと」
「何そうだったの?何で早く言わないんだよあたしそんなの聞いてないよ」
「いっいっいっ言ってない!私まだ何も言ってない」
「あ、シャル」

えー!





















































どきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきど きどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどき

、ノブナガかフィンクスに逢った?何か言われなかった?」
「え、いや、お昼以来逢ってない、ってお昼からあんまり経ってないけど」
「そ、そーか、よかった」
「何で?」
「いやあ別に何でも!」

シャルの特別ににこにこした笑顔が別の意味に取れて仕方がない。さっきの会話聞かれてたら私死んでしまう!ま、まちちゃん何かフォローして!

「じゃ、あたしは行くから」
「え!」
「あ、うんじゃあまた後で」
「えー!(嘘やめてよー)」
「何何か不都合でも?」
「え、いや、それは何も」
「そう。ならいいんだ」

何処がいいのか。これっていいのか?私の何かが弾けそうな思いとは裏腹にシャルはふうと息をついて膝を折った。相当熾烈な追いかけっこを極めたようで体からだらだらと汗が吹き出ており、それを手でぬぐっていた。
透明な汗が弾けて落ち、地面の色を少し濃くして滲みていった。太陽はまだ私達を見ている。見つめている。彼はその下でぱたぱたと手を振り風を自身に送りながら汗を拭いている、その様子はとても、とても活力があって若者らしくて
せんじょうてきで

「暑いね。酷い暑さだ」
「うん」

彼は体を起こした。緑色の目が私をじっと見た。(太陽が私を見張ってるのに!)

「アイス、食べに行こうか」
「えっ!?行きたい!・・・でも私お金無いや。一銭も」
「俺にはあるよ。今日は見苦しい場面をお見せしたお詫びに奢ってあげる」
「えっ!!!」
「いや吃驚しすぎ」
「だって!だってね、シャルなんだかんだお金持ってるでしょ!でケチで有名じゃん!何時も何処からお金稼いで来るのかなって」
「うーん今日のこれは朝一番に大人達からスッたやつ」
「(恐ろしい子・・・!)誰から?」
のご飯を何時も横取りするご近所のおっさんだよ。せこい事する罰」

もうやめてやめてそんな話!思わず好きをくちにだしてしまいそう

「で、アイスパーラーでさっきマチと話していた事聞かせてもらう事にするよさあ行こう」
「(!!)ちょっちょっちょっとそれはご勘弁・・・!」
「レッツゴー」

腕を取らないで私の傍でそんな笑いながら楽しそうにしたら、私もうすぐでくちにだしてしまいそう
太陽が私を見ている!見ているのにシャルはそんな事お構い無しにしたい事をする。今朝一番に与えられた私の不安と太陽を重ねてすっかり縮こまってる私はなんてちいさいんだろう!不安と太陽、汗と扇情、

「や、やっぱり悪いよ!」
「ううん俺が行きたいの」

無理だ、私はこの緑色に勝てない!










8/30